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マーケティングにおけるポジショニング戦略とは?成功に導く実践方法と業種別の事例解説

マーケティングにおけるポジショニング戦略とは?成功に導く実践方法と業種別の事例解説

目次

マーケティングにおけるポジショニング戦略とは、市場にあふれる製品やブランドの中から、顧客に自社製品を手に取ってもらったり、サービスを知ってもらったりするプロセスを作ることです。

ポジショニングが優れていると、競合との明確な差別化ができるため、市場で存在を確立できます。

この記事では、ポジショニング戦略だけでなく、実践方法や業種別の事例解説についても詳しく解説します。

マーケティングにおけるポジショニングとは?

ポジショニングとは、自社製品がどのように魅力的であるかを、ターゲットの顧客に認知させるための分析方法の1つです。マーケティング戦略を考える中でも、非常に重要なプロセスです。

ポジショニングの基本概念

マーケティングにおけるポジショニングについて、詳しく解説していきます。

ポジショニングの目的と重要性

マーケティングにおけるポジショニングの目的とは、顧客やターゲット市場に対して、自社製品やサービスが独自の存在を確立できるようにすることです。そのためには、市場の需要や顧客の願望を理解し、それに応じた製品の特徴やメリットをアピールしなくてはなりません。

これは、マーケティング戦略で用いられる代表的なフレームワーク「STP分析」で実施されるプロセスの1つでもあります。

セグメンテーション・ターゲティングとの関係性

「STP分析」では、一般的にセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの流れで自社製品を販売する対象や方法などを決めていきます。

セグメンテーションとは、市場(顧客)を細分化し、戦略市場構造を定義するプロセスです。類似の属性を持つ顧客ごとに市場を分類し、グループに分けていきます。

ターゲティングは、セグメンテーションによって分類された市場の中から、自社商品・サービスの強みや優位性を生かせる市場を選定するプロセスです。

最後に、ポジショニングで、セグメンテーション、ターゲティングで決めた「誰に」という顧客層に対して、「何を」打ち出し、どのように訴求するのかを明確にします。

ポジショニングの歴史と進化

マーケティングの概念が生まれたのは1900年代でした。米国の経営学者であるフィリップ・コトラー氏が、顧客のセグメンテーションやマーケティング・ミックスなどを考案し、現代のマーケティングでも活用されている理論を生み出しました。

当時は、需要よりも供給のほうが多い時代で「より安くすればより多く売れる」という「製品中心」のマーケティングでした。

時代は流れ、1970~1980年代になると、技術発展によって似たような製品が市場に多く出回るようになり、買い手はその中から製品を選ぶ「買い手主導」のマーケティングへと変化しました。

1990年代以降になると、企業間の競争はますます過熱していきます。一方で、消費者たちはインターネットの普及により、今まで得られなかった情報を獲得できるようになりました。次第に、事業活動を通じて、企業の「社会的責任」にも注目が集まり始めます。

顧客は企業に対して、環境問題などの社会への影響も考えるようになり、製品を手に取る理由に「環境に良いから」「誰かのためになるから」といったものも増え、マーケティングにも「環境や教育への配慮」を考える必要が出てきました。

さらに2010年代では、ソーシャルメディアの普及により、個人でも情報を発信できるようになりました。そのため、製品にも精神的価値を満たせるものが求められるようになりました。「自己実現」のマーケティングです。

このように、顧客の感情は時代や技術の発展によって変化し、マーケティングも進化しているのです。

過去の成功事例から学ぶポジショニングの進化

ポカリスエットは、今は健康的な清涼飲料水としてポジションを確立していますが、最初はそうではありませんでした。当初はスポーツ飲料のポジションを目指していましたが、既に競合製品が強いポジションを獲得していたのです。

そこで、ポカリスエットは「健康的な」の部分を強調し、健康飲料水として打ち出すことで、現在のポジションを獲得できました。また、ブランドイメージを生かし、発展途上国でも展開するようになっていきます。

このように、ポカリスエットは競合製品が多数存在する市場から、独自のポジションを確立し、さらには企業の「社会的責任」にも応えて市場の拡大へとつなげることができました。

ポジショニング戦略を立てるためのステップ

ポジショニング戦略を立てるためのステップについて、順番に解説します。

自社の独自価値を見つける

まず、自社製品やサービスには、市場や顧客にとってどういった価値があるかを明確にする必要があります。その価値をどうやって見つけるか、詳しく見ていきましょう。

顧客のKBF(購買決定要因)を探る方法

KBF(購買決定要因)とは、消費者が製品やサービスを選択する際に最も重視する、決定的な要素のことです。

商品やサービス内容によって異なりますが、一般的には「価値」「品質」「ブランド」「デザイン」「機能性」「サービス」などを指します。自社製品やサービスには、どのような特徴があるかを洗い出してみましょう。

自社と競合の比較分析による優位性の特定

自社製品の比較となる、競合商品やサービスも同様にKBFを洗い出してみましょう。そうして洗い出した要素を比較していくと、自社製品はどのような点が優れているのか、反対に競合製品はここが優れている、といったそれぞれの「優位性」が特定できるようになります。

ポジショニングマップの作成

ポジショニングを検討する際には、戦略的に有効な2つの特徴を絞り込み、縦軸と横軸の表にしてあらわします。この表が「ポジショニングマップ」です。上記で洗い出した要素を2つ選び、軸にしてポジショニングマップを作成してみましょう。

軸マップを使った戦略的ポジショニングの実践

KBFの中から2つ要素を取り上げて、2軸マップを使ってポジショニングマップを作成します。たとえば、縦軸には「価格」を、横軸には「使用頻度」を取り上げるなど、縦軸と横軸は関連性の低いものを入れることを意識するとよいでしょう。

この時、無理に競合との違いを示そうとして、顧客にとって比べても意味のない要素や興味の低い要素を軸に設定しないように注意してください。

競合との差別化を明確にする方法

先述で洗い出した要素に基づいて軸ができたら、競合製品をマップに位置づけしていきます。一度に完璧に配置する必要はありません。複数人でディスカッションしながら配置し、視線が偏らないように、なるべく公平な目で配置しましょう。

競合が配置出来たら、自社が目指すべきポジションを決めます。すでに強力な競合がいる場所はなるべく避けると、自社が優位性を出しやすくなるため、競合との差別化を明確にできます。

効果的なポジショニングの実現方法

ポジショニングマップに自社と競合を配置することで、軸とした2つの要素に対する差別化が明確になりました。しかし、単にポジショニングマップの空いている場所に自社を配置すれば、すべてがうまくいくという単純なものではありません。

ターゲット市場での「オンリーワン」ポジションの構築

競合が多数いるにも関わらず、ポジショニングマップの空白ということは、なにか根本的な困難があり利益をあげにくい可能性があります。

また、競合と被らないからといってそのポジショニングで押し出しても、自社ブランドや企業の持つイメージとかけ離れている場合、かえって不利益が生じる可能性も出てきます。

ポジショニングを決める際は、「顧客にとって重要度の高い軸を設定する」「自社イメージに沿ったポジショニングを選ぶ」ことに注意しましょう。

ポジショニングは一度で完璧にできなくてもいいものです。市場環境も変化するため、細かく再調整して、目指すべき「オンリーワン」ポジションを構築しましょう。

顧客の頭の中に価値を定着させる施策

自社製品の特徴やメリットを、顧客やターゲット市場に対して価値を定着させるためにはどうすればよいでしょうか?ポジショニング戦略では、下記のポイントを満たしているものは失敗しにくいといわれています。ぜひ参考にしてみてください。

  • 顧客にとって重要なベネフィットをもたらす位置づけか
  • 競合他社が提供していないか、あるいは自社がより特徴的な形で提供できるか
  • その位置づけの違いは、消費者に理解してもらうことが可能か
  • 消費者はその違いを得るために、支払う余裕があるか
  • 競争相手が、容易に真似できないか
  • 企業はその差別化を、採算の取れる形でビジネスにできるか
    (参照:『Principles of marketing』 p.218)

ポジショニング戦略の成功事例(多業種から学ぶ)

実際に、過去どのような製品がポジショニング戦略に成功しているか、事例とともに見ていきましょう。

家電業界:ソニー「ウォークマン」のポジショニング戦略

1979年に発売されたソニーの「ウォークマン」は、ポジショニング戦略の中でも「自社製品のユニークさを訴求した」事例として非常に有名です。

新しい価値観を生み出すポジショニング

ウォークマンが開発される以前は、録音機能を用いてそれを再生するという理由でテープレコーダーが購入されていました。そのため、録音機能のないテープレコーダーは売れるわけがないと否定的な意見も少なくなかったそうです。

そこで、ソニーはウォークマンを「録音できない小型のテープレコーダー」というポジショニングではなく、「歩きながら音楽が聴ける」というポジショニングで新たな価値を打ち出しました。

また、「外で音楽が聴ける」というコンセプトを売り出すために、社員にウォークマンを持たせて街中を歩かせ、新しい文化を多くの人目に触れさせました。こうして、ウォークマンとそのコンセプトがもたらした新しい価値観は、人々にとって非常に魅力的に映り、大ヒットとなりました。

自動車業界:日産「マーチ」のブランドイメージ構築

日本を代表するコンパクトカー、日産「マーチ」。
1982年に初代が登場し、2022年に販売終了するまで40年近く愛されてきました。

当時の日産「マーチ」が幅広い年齢層に受け入れられてきた理由は、歴代モデルの訴求の仕方には多少の違いがあるものの、日常生活の足となる親しみやすい車であることがきちんと訴求されてきたからです。

親しみやすいブランドとしての定着

日産「マーチ」は時代の流れに合わせて、CMの雰囲気を変えて「親しみやすさ」をアピールしてきました。

初代「マーチ」は、低価格でありながら、小型でも大人が5人乗れる設計が好評で、CMには当時大人気だったアイドルが登場しました。

バブル崩壊後に販売された2代目は、先代に比べるとやや丸いフォルムにモデルチェンジし、CMでは日本の狭い道にも通じるヨーロッパの街の狭い小道を軽快に走らせました。このように、日産「マーチ」は、身近で親近感が湧くイメージをCMでアピールしてきました。

これによって、日産「マーチ」が新しいデザインにモデルチェンジしても、一貫したイメージや世界観が保たれているため、親しみやすいブランドとして長年定着し続けたのです。

飲食業界:スターバックスのプレミアムコーヒーのポジショニング

かつて、カフェチェーン市場は低価格競争が進んでいました。しかし、その中でも「スターバックス」は高めの価格設定で独自のポジションを確立しています。これは、ビジネスパーソンをターゲットに「人々の心を豊かで活力あるものにするために」というミッションを掲げているからです。

高価格帯でも成功する「特別な体験」の提供

スターバックスでは、「誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります」という文言を掲げ、自宅・職場以外のサードプレイスとしての場所を提供し、そのための環境整備にもこだわり、長期にわたる人気を維持しています。

また、そのポジショニングに共感し、何度でも利用してくれるユーザーとの絆を強めるためにロイヤリティプログラムを充実させるなど、ポジショニングに沿ったマーケティング戦略を展開することで、その地位をさらに強固なものにしています。

ファッション業界:ユニクロの「機能性とコストパフォーマンス」ポジショニング

ユニクロは「Made for All(みんなのユニクロ)」というキャッチフレーズを用いるほど、性別、年齢、国内外などにとらわれることなく商品展開しており、一見ターゲットの絞り込みを行っていないようにも見えます。しかし、実はしっかりとターゲットはある層に絞り込まれています。

低価格で高品質を打ち出す戦略

ユニクロの大きな特徴は、老若男女問わないカジュアルなファッションにあります。流行やトレンドを追わないファッションは、その分商品リードタイムが長くなり、少ない品種を大量生産して、低価格で高品質を保つことが可能です。

そうしたユニクロのターゲット像は「割り切りファッション」です。
無難な服が好きで、ファッションで目立ちたくない層や、洋服は低価格でもいいと割り切っている層をうまく取り込んで、商品展開と合致したブランドイメージを築き上げました。

IT業界:Appleのプレミアムブランドとしてのポジショニング

Apple社では、スティーブ・ジョブズによる差別化戦略が行われてきました。「独自性」「デザイン性」「操作性」、この3つは一目見ただけでわかる圧倒的にシンプルな製品のデザインにきちんと落とし込まれています。

デザインとユーザー体験の差別化

Apple製品といえば、誰もがリンゴマークとボタン一つのシンプルなデザインを思い浮かべるでしょう。圧倒的にシンプルなデザインがもたらす性能は、必然的に他社製品との差別化につながっています。

シンプルさ故に模倣もしづらく、独自性にもつながり、操作性にも表れています。
製品のデザインに落とし込まれたApple社の3つの戦略は、そのまま競合との差別化につながり、揺るぐことのない確かなポジショニングを築いています。

小売業界:ニトリの「お、ねだん以上」戦略

「お、ねだん以上。」という、単純かつシンプルなキャッチコピーで知られているニトリ。

これによって、「ニトリの商品はお買い得」というイメージづけに成功しています。値段以上の価値がある、つまり低価格で高品質な商品を提供しているブランドというポジショニングを確立しているのです。

低価格でも高品質という顧客認識の構築

「安かろう悪かろう」という言葉があるように、つい最近まで安いものほど質は低いという考えが市場では当たり前でした。

しかし、ニトリは品質にこだわりながらも、お客様にとって買いやすい価格帯を実現し、低価格と高品質を両立させました。「お、ねだん以上。」のポジショニングは、こうして築き上げられたのです。

ポジショニングとマーケティングミックス(4P)の関係性

ポジショニングとマーケティングミックス(4P)の関係性マーケティング戦略では、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングまで進めたら、次は「マーケティング・ミックス」のプロセスに進みます。

マーケティング・ミックスとは、理想的な顧客から望ましい反応を得るために、「4P分析」や「4C分析」といったフレームワークや、ツールなどを組み合わせることです。マーケティング戦略における「実行戦略」部分とも呼ばれています。

ポジショニングに基づく4P戦略の最適化

マーケティング・ミックスでよく用いられるフレームワークの一つが「4P分析」です。企業の視点から見た分析で、「製品(Product)」「価格(Price)」「流通(Place)」「プロモーション(Promotion)」といった項目があります。

顧客視点から見た「4C分析」もあり、こちらは「顧客価値(Customer Value)」「顧客が払う経費(Cost)」「利便性(Convenience)」「顧客とのコミュニケーション(Communication)」といった項目で、4P分析の項目と対比になっています。

ここでは「4P分析」のそれぞれの戦略について解説します。

製品(Product)戦略

企業が生産している「製品やサービス」のことです。

「製品」なしに、マーケティング戦略は実現されないため、4Pのなかでも重要な要素です。「製品」には、品質・デザイン・パッケージ・プランド・アフターサービスといった製品を構成する要素がすべて含まれています。

価格(Price)戦略

企業が生産する製品やサービスの「提供価格」のことです。

自社が継続的に利益を得るためには、価格は高過ぎても低過ぎてもいけません。市場内での相場や、自社のシェアや競合他社との競争力などを鑑みて、適正価格を決定します。

流通(Place)戦略

製品の「流通ルート」や「販売場所」などのことです。

「多方面に」「限定的に」「独占的に」「多様なチャネルで」といった、幅広い選択肢の中から流通手法は選ばれます。流通によって、はじめて顧客と製品に接点を持たせることができ、売上アップや製品ブランドの向上にも直接影響するため、製品・価格同様に大切な要素なのです。

プロモーション(Promotion)戦略

製品の「広告宣伝」や「販売促進」などのことです。

製品やサービスを顧客に認識させ、購入してもらうためには欠かせません。マス広告、ホームページ、SNS、キャンペーンなど、プロモーション手法は多岐にわたり、ターゲットとなる顧客の年齢層によって影響するメディアも異なります。

そのため、ターゲットとなる顧客に呈して最適な手法はどれかを綿密に調査して、選定する必要があります。

ポジショニング戦略の見直し方法

繰り返しになりますが、ポジショニングの目的とは、顧客やターゲット市場に対して、自社製品やサービスが独自の存在を確立できるようにすることです。

しかし、考えているうちに重要な目線が抜けていたり、企業側に偏った独りよがりなポジショニングができてしまったりすることもあります。
そうした場合、どんな点を見直せばよいのかを確認していきましょう。

市場環境の変化に応じた柔軟な調整

ポジショニングを考えているうちによくあることが、「自社製品の特徴についてにしか考えなくなってしまい、市場環境を無視してしまう」というミスです。

ポジショニングの目的は、顧客やターゲット市場に対して、自社製品やサービスが独自の存在を確立することですが、顧客のニーズがなければ意味がありません。顧客の考える価値観やニーズに合わせた商品やサービスを提供することで自然と売れていくのが、ポジショニング戦略です。

また、競合製品と差別化できていると思っていても、リーダー企業による同質化戦略などで、後から簡単に追随される場合もあります。企業側では差別化できていると思っていても、顧客側では差別化できていないように見えるのです。

市場環境が変わったり、新たな競合が出現したりすると、もともとのポジションも変化します。定期的に見直して、自社がどこを狙うかポジショニングを見直していきましょう。

成功事例から学ぶ持続的なポジショニング戦略

人気のボディケア用品である「シーブリーズ」は、もともとアメリカで誕生したブランドです。
日焼け後のケアに使う商品として、アクティブなスポーツを好む20~30代の若者に人気の商品でした。

しかし、時代の流れで日焼けを嫌がる女性も増えたことから、売り上げは低迷してしまいます。そこで、ポジショニングを見直し、ターゲット層をもっと若い女子高生などの10代の女性に変更しました。新陳代謝が活発な若者にとって、制汗剤は大きなニーズがあり、シーブリーズは再び人気商品となりました。

まとめ: 効果的なポジショニングで競争優位を確立する

ポジショニング戦略とは、市場にあふれる製品やブランドの中から、顧客に自社の製品やサービスを手にしてもらうプロセスを作ることです。

効果的なポジショニングを位置取ることで、競合との明確な差別化ができるため、市場で存在を確立できるでしょう。

しかし、競合との差別化を目指すのではなく、顧客のニーズを読み取ってそれに沿ったポジショニングを心がけることが重要です。市場環境や時代の流れをよく読み、まだ見ぬニーズを見つけて、アプローチしていきましょう。

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