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チャットボットを導入することで「問い合わせ業務の負担を減らしたい」「カスタマーサポートのための人件費を減らしたい」とお考えの方が多いのではないでしょうか。
チャットボットは、問い合わせの業務効率化や人件費削減などが期待できることから、さまざまな分野のビジネスシーンで注目されています。顧客や社内の人から問い合わせを多く受ける職種では、チャットボットの活用事例がいくつもあります。
本記事では、チャットボットとは何か、導入のメリットや活用方法を解説します。チャットボット導入の流れや活用事例も紹介しますので、チャットボット導入を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
チャットボットとは?
チャットボットについて詳しく知っていただくために、そもそもチャットボットとは何かを解説します。
チャットボットの基本概念
チャットボットとは、一言でいうと「ユーザーの質問に対して、自動で答えを出してくれるプログラム」のことです。ここでは、チャットボットの定義と歴史を紹介します。
チャットボットの定義
チャットボットとは、「チャット(対話)」と「ボット(ロボット)」を組み合わせた言葉です。前述した通り、人間が入力した質問に対して、自動で返答するプログラムのことを指します。
チャットボットはSNSや企業のホームページなどで幅広く使われているため、実際に使ったことがある方も多いのではないでしょうか。チャットボットはさまざまな質問に対し、迅速かつ柔軟な返答が可能であるため、特にビジネスシーンでの活用が注目されています。
チャットボットの歴史と進化
チャットボットの源流は、1966年にアメリカのマサチューセッツ工科大学で開発された「ELIZA(イライザ)」とされています。ここ数年で注目が集まるようになってきたチャットボットですが、その歴史は意外にも古くから存在していました。
以降、1997年にマイクロソフト社の「オフィスアシスタント」、2011にApple社の「Siri」など各社からさまざまなチャットボットが開発されるようになりました。
チャットボットは発表当初に回答の正確性や柔軟性に難がありましたが、ビッグデータの活用や生成AIの性能向上により、飛躍的に成長を続けてきています。
チャットボットの種類
チャットボットと複数種類があり、それぞれ特徴や仕組みが異なるため用途もさまざまです。ここでは、代表的なチャットボットを2種類紹介していきます。
ルールベース型チャットボット
ルールベース型チャットボットとは、質問者へいくつかの選択肢を提示し、選ばれた選択肢に対して決められた返答をするものです。別名、シナリオ型チャットボットとも呼ばれます。
ルールベース型では、質問内容の選択肢とそれぞれの選択肢に対する回答があらかじめ決められている点が特徴です。
質問と回答をあらかじめ設定するため、よくある質問や回答例などで質問と回答がすでに決まっているものや、よく繰り返される質問内容であれば業務を大幅に改善できる可能性があります。
やり取りが定型化されていることで導入しやすい反面、設定ルール以外では柔軟に対応できません。つまり、多くの質問に答えさせようとすると、その分膨大なルール設定の必要が出てきてしまうデメリットもあります。
AI(人工知能)搭載チャットボット
AI搭載チャットボットとは、コンピュータが人工知能を用いてどのような回答が適切かを自ら判断して返答をするものです。あらかじめ多数の質問と回答をコンピュータに学習させることで、ルールベース型チャットボットよりも柔軟に返答できるようになります。
AI搭載チャットボットは質問と回答を一度学習させてしまえば、その後は質問者からのフィードバックをもとに、自ら精度を上げていこうとします。そのため、利用開始後の運用コストや対応人員の削減が期待できます。
一方で、定期的なメンテナンスはどうしても必要である点、AIが間違ったフィードバックで学習すると以降の回答率の正確性に影響が出てしまう点にも注意が必要です。
チャットボット導入のメリット
チャットボットを導入するとどのようなメリットがあるのか、3つのポイントを解説します。
業務効率化とコスト削減
ビジネスにチャットボットを導入すると、業務効率化やコストの削減が期待できます。
問い合わせ対応の自動化
顧客からの問い合わせ対応をチャットボットで自動化することが可能です。
一度初期設定を済ませてしまえば、問い合わせ業務のほとんどをチャットボットが肩代わりしてくれるようになるため、問い合わせ対応のための人件費削減や業務効率化が期待できます。
24時間365日の対応可能性
チャットボットは24時間365日稼働できるため、企業の営業時間外でも問い合わせ対応が可能です。
チャットボットであれば時間を問わずに問い合わせに対して自動で返答してくれるため、深夜などの遅い時間帯に問い合わせ担当を稼働させておく必要がありません。
顧客体験(CX)の向上
顧客との接点が多様化している現代において、企業の競争力を高めるには「顧客体験(CX)」が重要です。チャットボットを活用すれば、顧客体験の向上が期待できます。
即時対応による顧客満足度向上
チャットボットは時間を問わず稼働できることに加え、質問に対して即時に返答してくれる点も大きなメリットです。
従来であれば、顧客側で急に問い合わせたいことができても、電話がつながらなかったり、メールの返信に時間がかかったりしてしまう場合がありました。
しかし、チャットボットであれば、いつでもすぐに顧客のニーズに応えることができるため待ち時間のストレスがなくなり、結果として顧客満足度の向上につながります。
個別対応の強化
従来の電話やメールといった問い合わせ方法の場合、人が対応する以上どうしても担当者によって回答の品質に差が出てきてしまいます。不正確な回答はクレームに発展しかねないため、問い合わせ対応の品質は常に保てるようにしたいところです。
チャットボットであれば基本的に回答の品質が一定に保たれるため、品質のばらつき防止や品質を保つための教育コストの削減にもつながるでしょう。
複数の問い合わせへの同時対応
問い合わせが多く重なってしまうと、業務や人員を逼迫してしまう可能性があります。しかし、チャットボットであれば、複数の問い合わせに対しても同時に対応可能です。
電話やメール対応の負担軽減
チャットボットは質問に対する回答が即時に終わるため、電話やメールでの問い合わせ対応による負担が軽減できます。
電話の場合、顧客に折り返したくても不在だったり、メールの場合は返信がなかなか届かなかったりと問題の解決まで時間がかかります。解決しなければ、その分手間が増えてしまうのです。チャットボットの活用により、顧客とのやり取りを簡潔に済ませられます。
問い合わせ集中時の効果的対応
特に電話での問い合わせの場合、回線が込み合っていると、なかなか電話がつながらないケースも増えてくるでしょう。何度かけても電話がつながらないと、顧客満足度の低下を引き起こしてしまいます。また、回線数を増やすにも限界があります。
しかし、チャットボットの場合は、ネット回線に異常さえなければ問い合わせが集中してしまっても円滑に対応が可能です。電話による待ち時間が発生しないため、顧客側もストレスなく問い合わせができるようになります。
チャットボット導入の具体的なステップ
いざチャットボットを導入することになっても、何から始めればいいのかわからない方も多いかもしれません。ここでは、チャットボットを導入するためのステップを紹介していきます。
チャットボット導入前の準備
まず、チャットボットを導入する前準備について解説します。
導入目的の明確化
まず、なぜチャットボットが必要なのか、導入の目的を明確化することが大切です。
たとえば、「問い合わせ対応を自動化して人件費を抑えたい」「遅い時間の問い合わせが多いから営業時間外でも対応できるようにしたい」などがあるでしょう。
目的と手段がかみ合っていない場合は、チャットボットを導入したとしても、かえって非効率となる可能性があります。導入を検討している方は、まず導入目的を明確化し、本当にチャットボットで解決できるのか検討してみましょう。
対応範囲の決定
導入目的が明確化できたら、チャットボットに任せる対応範囲を決めます。
たとえば、問い合わせのやり取りをする相手が「社内の人間のみ」か「社外の顧客も含む」のかによって質問の対応範囲が変わります。
チャットボットで求める範囲に対応しきれない場合は、人間のオペレーターによる対応と併用することも可能です。的確な対応範囲を決めることで、問い合わせの漏れを防ぐことにつながります。
チャットボットの構築・導入
チャットボットの導入目的と対応範囲を明確化した後は実際に構築、導入の流れになります。
適切なプラットフォームの選定
自社のニーズに合うチャットボットは何かを選定していきます。
ただ、世の中で出回っているチャットボットの種類が多すぎて、どのように選べばいいのか悩まれるかもしれません。
その場合は、チャットボットの比較サイトや口コミサイトを参考にしてみることがおすすめです。一緒に「導入費用の安さ」、「導入の手軽さ」など譲れない条件を決めてから比較すると、より自社に合うチャットボットを探しやすくなります。
スクリプト作成とテスト運用
導入するチャットボットを選定した後は、スクリプトを作成し、テスト運用を行います。
今回でいうスクリプトとは、チャットボットに読み込ませる「想定される質問と回答」のことです。チャットボットはスクリプトによって様々な問い合わせパターンを学習します。
チャットボットに学習させた後は、質問に対して想定の回答をするかどうかテストを行います。想定されるパターンをすべて試す必要があるため、パターンの洗い出しは非常に重要です。
効果的な運用のためのポイント
チャットボットは導入したら終わりではなく、引き続き効果的な運用が必要です。
継続的な改善と最適化
無事チャットボットを運用してみても、想定とは異なる問い合わせが生じる可能性があります。もしチャットボットで解決しきれないようであれば、質問と回答のパターンを追加したり、修正したりしなければなりません。
事前に用意したスクリプトだけではすべてを対応することは難しいため、継続して回答の改善や最適化をしていく必要があります。
データ分析による精度向上
チャットボットは、顧客からの問い合わせ内容をデータとして蓄えることが可能です。
収集したデータを分析し、顧客からのニーズを把握することで新しい質問や回答のパターンを作成できます。多種多様なパターンをチャットボットに学習させていくことで、より精度の高い回答を得られるようになります。
チャットボットの導入事例
チャットボットの最適な選定方法や、効率的な運用についてなどを知りたい場合は、他の企業での導入事例を参考にしてみることも有効です。
特に競合他社の導入事例であれば、より自社への参考になりやすいでしょう。ここでは、代表的な導入事例を3つ紹介します。
ECサイトでのチャットボット活用例
某ECサイトでは、LINEのチャットボットで顧客からの問い合わせに対応しています。
「注文履歴」や「返品」など、大きな分類のカテゴリを選択すると、さらに細かいカテゴリが選べるようになります。最終的には自動返信によってチャットボットから返答される仕組みです。
事前に用意したカテゴリを顧客に選んでもらうだけなので、状況によるバラつきが起きにくく、精度の高い返答を実現しています。また、顧客側からしても、表示されたカテゴリを選んでいくだけであるため、簡単に問い合わせができるようになっています。
問い合わせ対応による手間を削減しつつ、問い合わせにかかる顧客のストレスも軽減しているという点で、企業と顧客の両方でメリットがあるため、チャットボットの効率的な導入に成功している事例といえるでしょう。
カスタマーサポートにおける成功事例
新型コロナウイルスの流行により、ウイルス対策関連の商品の需要と同時に、商品を取り扱う企業への問い合わせが相次ぎました。
しかし、企業は従業員への感染を防がなければならないため、むやみに従業員を増やすことができない状態でした。やがて緊急事態宣言が発令されてから出社する人数も減ってきたため、電話での問い合わせ対応を停止し、代わりにチャットボットを導入しました。
チャットボットがあれば、少ない人数での運用ができます。また、問い合わせの対応者による回答の品質も一定であるため、ウイルス対策で悩んでいる人に的確な返答も可能です。
チャットボットの導入により、稼働人数を減らしながらも、問い合わせ対応の品質は落とさないようにすることに成功しています。
医療や金融業界でのチャットボット導入効果
予約制の病院が、電話のみではなくチャットボットからでも予約可能にした事例もあります。病院には患者のみではなく他の医療機関などからも電話があるため、なるべく予約による対応の負担を減らしたい状態でした。
チャットボットであれば問い合わせ対応の負担を減らしつつ、患者側も病院が開いている時間を気にせず予約ができるメリットがあります。
また、金融業界では非対面サービスの効率化に成功しています。特に銀行や保険会社はアプリでも手続きが可能な場合がありますが、認知度が低かったため電話での問い合わせや来店数が多いままでした。
チャットボットでは最寄りの店舗の混雑具合を表示したり、来店が必要な手続きかどうかを判別したりしています。内容によっては、アプリによる手続きに誘導するため非対面サービスの認知度向上にも役立っています。
チャットボット導入時の注意点
いざチャットボットを導入しても、「思ったような効果が出ない」「むしろ問い合わせ対応の効率が落ちた」などの失敗はなるべく避けたいところです。
チャットボットの導入に、失敗しないための注意点を3つ紹介します。
導入コストと運用費用の管理
チャットボットの導入には準備に時間がかかってしまうことから、初期費用だけではなく対応する人的コストや運用のための教育コストなどもかかる点にも注意が必要です。また、導入後も引き続きシステム料などの費用が発生します。
対応内容が簡単なチャットボットであれば比較的安価で導入できますが、AIを搭載したチャットボットの場合は便利な反面、費用が高額になってしまう場合があります。
もちろんチャットボットは省人化による人件費の削減が期待できるため、運用前に費用対効果の試算をしっかり行うようにしましょう。
システムのセキュリティ対策
チャットボットは、顧客との多くのやり取りを通じて情報を収集しているため、システムのセキュリティ対策はしっかり行う必要があります。やり取りの種類が多い分、場合によっては個人情報や機密情報などを取り扱う場合もあるからです。
また、チャットボットは24時間365日稼働するメリットがありますが、同時にサイバー攻撃の標的になりやすい傾向もあります。
チャットボットは便利な反面、情報漏洩や不正アクセスが起こりやすいシステムであるため、チャットボットのベンダーと相談したうえで、セキュリティ対策を講じていくようにしましょう。
導入後のサポート体制の整備
チャットボット導入後のサポート体制を整備しておけば、以降スムーズな運用ができるようになります。
たとえば、チャットボットの返答の修正や追加時、実際に触ってみたけど変わらない時などで社内にサポート体制があれば安心です。
ただ、専属でサポート担当を置く場合は兼業でチャットボットの対応をしたり、運用についての自己学習をしたりしなければならないため、サポートの構築には時間がかかる場合があります。その場合は、チャットボットのベンダーなど、社外でサポート体制を整備することも可能です。
まとめ:チャットボットを活用したビジネスの未来
チャットボットはさまざまなビジネスシーンで注目されてきているツールであり、問い合わせ対応に活用することで業務効率化や人件費削減などが期待できます。
また、チャットボットはなかなか電話がつながらない時や、時間外に問い合わせたいときでも利用可能である点から、顧客側にもメリットが多いツールといえます。
しかし、チャットボットは導入前の準備が多く、導入後も継続的な最適化や精度向上をしなければなりません。チャットボットをしっかり業務に取り入れるまでには、多くの時間と労力を費やしてしまいます。
チャットボットの効率的な導入や運用にお悩みの方は、ぜひMPHへご相談ください。
自社に合うチャットボットの選定や、効果的な運用方法をご提案させていただきます。
相談は無料ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。